P2P技術が15年前に遭遇した問題

diamond.jp

ブロックチェーンとマストドンには同じ問題があるんじゃないか?とふと思った。本の虫 マストドンが直面している問題はすでにP2P技術が15年前に遭遇した問題だ

マストドンは各インスタンスがつながっているインスタンスからのメッセージを購読しどんどんログが溜まっていく。ブロックチェーン、というかビットコインはすべてのトランザクションを各クライアントが保存したまっていく。まぁビットコインの場合はすべてのトランザクションを保存しないタイプの簡易型クライアントが主流だという意見もあるだろうが、一定数すべてのトランザクションを保存するクライアントが存在していないと正しい合理形成が行えなくなる。

(極端な例をあげれば1台のサーバーしかすべてのトランザクションを保存しなくなったら、そのサーバーの管理者がやりたい放題歴史を改ざんできることになる。51%問題どころの話ではない。)

データがどんどんたまっていく以上にストレージ技術が進化すればいいんだけれども、現実ストレージ技術が進化するよりもデータ増加速度のほうが上回っているだろう。ちらっと調べた結果、ビットコインのブロックチェーンは年間50TBくらいの勢いで増える可能性があるらしい。(ホンマか?)

そうなってくると100GBくらいしかストレージがないスマホや1TBくらいしかストレージがない市販PCからビットコイン取引を行う一般ピーポーは簡易型クライアントを選ばざるを得なくなる。「信用できる」サーバーに保存されているブロックチェーンに頼ることにある。

ブロックチェーンの容量が増えれば増えるほど、世界から完全型のクライアントは消えて「信用できる」少数のブロックチェーンのストレージが生まれる。しかし、それは「お互いに信用できない者だけでネットワークが構築されているのにProof of Workによって信用が形成される」というブロックチェーンの本質からはずれていないだろうか。またその少数の「信用できる」サーバーたちが裏で手を組み悪事を働いていたら?

これは先程リンクをったブログで述べられているストドンと同じような問題が生じる。

  1. 著作権侵害、児童ポルノ、その他の違法なデータ(ドイツにおけるナチ党のシンボルなど)がネットワーク上に蔓延する
  2. ネットワークに参加するノードがキャッシュとしてデータを溜め込むためにネットワークに参加するための計算機、ストレージ、帯域などの資源が莫大になり、個人が参加しづらくなり、結果としてゲートウェイ経由での参加が増える

ビットコインの場合1は「悪意を持ったマイナーが作った偽の歴史を持つブロックチェーン」になるだろうか。

この2つの問題について、マストドンの場合に提案されている解決策は次のよう。

さて、問題1.に対処するには、有人の検閲を設置するしかない。有人の検閲を設置するには、結局企業としての資本や雇用が必要だ。企業による支配から脱却することを目指しているマストドンとしては皮肉なことに、企業が必要になる。自分のインスタンス内のデータの適法性については十分な資本と労力さえかければ検閲できるが、よそのインスタンスのデータはどうしようもない。すると、外から内へのリモートフォローは無効化せざるを得ない。

問題2.に対処するには、強力なインフラが必要だ。大規模なデータセンター、ストレージ、トラフィックを提供する必要がある。これにも、企業による資本が必要だ。ネットワークの規模が大きくなっていくと、これまた皮肉なことに個人ではその規模のインフラを提供できず、企業には勝てない。そして、規模が大きくなっていくと、すべてを無制限にスクレイピングできるAPIを外部に提供することがパフォーマンス上難しくなっていくだろう。そこで、内から外へのリモートフォローも無効化せざるを得ない。

ビットコインの場合も同様で、「各マイナーが正しくマイニングしているかチェックする中央サーバー」が必要になるし、「マイニングに参加できるのは大規模なデータセンター、ストレージを持つ」ものだけに限られてしまう。

結局、どちらもみんなが対等で中央のないネットワークは遠かれ少なかれ破綻するであろう。世の中には「収穫逓増の法則」があるのだ。

昨今のマストドン騒動、マストドンじたいには全然興味がなかったけど、分散ネットワークについて考えるいい機会になったと思う。

これは読みたい。

ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか

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