ブロックチェーンって結局何に使えるんだろうか

いっときは無限の可能性を感じていた、つまり何かに使えそうだけど何に使えるかよくわからんけどすごいと思っていたブロックチェーンなんだけれども、最近わかってきた気がする。

ビットコインかどうかはわからないが、ブロックチェーンを使ったある1つのチェーンが、価値のTCP/IPスタックみたいなものになるんじゃないかと思う。

プロトコル

ブロックチェーン界隈では、「プロトコル」という言葉をよく聞く。

もともとは外交儀礼という意味だが、ITの世界では通信時の決まり事を指す。

人間のコミュニケーションは、突然「おーい、それとって!」みたいな厳密性のかけらもないようなメッセージで通じてしまう。 しかしコンピューターは事前に想定していない形でメッセージを受け取ることはできない。 コンピューター同士がコミュニケーションするには、いろいろな決まりごとに沿ってメッセージを送る必要がある。

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このブログ記事が眼の前の画面に映るまでの仕組みをドキュメントにすると、おそらく数千・数万ページにわたる仕様書が必要になるんじゃないだろうか。 詳しくはこういうのを読んでほしい。

ネットワークはなぜつながるのか 第2版 知っておきたいTCP/IP、LAN、光ファイバの基礎知識

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しかしブロックチェーン界隈では「プロトコル」という言葉がちょっと違う感じで使われているようだ。 上記のネットワークにおけるプロトコルという言葉とかぶる部分も多いが、そちらに含まれていない意味も含まれているように思う。

Fat Protcolを例に、ブロックチェーンにおけるプロトコル

その代表として「Fat Protcol」という言葉がある。 僕はこれは賛同できずちょっと違わないかと思っているという前置きをした上で、要約するとこういうことだと思う。

オープンなブロックチェーン中心のエコシステムでは、その上で動くアプリケーションによって生成されるデータもすべてオープンな形でアクセス可能になる。 このためデータによる囲い込みができなくなる。ユーザーがわからしたら、今までのアプリケーションで使っていたデータがそのまま新しいアプリでも使えるわけである。 なので、アプリケーションではなく、プラットフォームとなるチェーンの方の価値が大きい、という話だ。

www.usv.com

まぁそもそも僕はブロックチェーンの使いどころはサービスの決済SDK+αみたいに使うか、法的にグレー/ブラックなことを分散アプリケーションの形で実現するかだと思っているのでそもそもアプリケーションによって生成されるデータがブロックチェーンにみんな載るという未来はないように思う。

「プロトコル」が、その場でのデータ交換の仕様に加えて価値のデータでの表現方法を規定しているということだろうか。

価値というもののデジタルでの表現方法を

ブロックチェーンは機械同士が価値をやりとりするプロトコル

ブロックチェーン技術を使った決済はIoTととても相性がよい。 特定の事業者が提供する決済サービスに依存することなく、ハードウェアに料金の授受機能をつけることができる。

クレジットカードや電子マネーを介さなくても、直接さまざまなハードが決済を提供できるようになる。 具体的に例を上げるとしたら、外のコンセントを使った分だけ電気料金を払えるようになるとかそのレベルで細かい支払いが可能になるように思う。

電気の売り手が東京電力とか既存の事業者を想定すると特に誰も得しないように感じるが、大きい事業者ではなく小規模の発電施設が作った電気を小売事業者を介さずに取引する、みたいな仕組みがやりやすくなるだろう。

かつて電力システムを構築するには、でかくて高い発電所を人里から少し離れたところに設置して、高圧の送電網をそこから伸ばし変電所を作って人里まで持ってくる必要があった。 しかしこれからは太陽光発電やマイクロ水力発電や蓄電池を使えば、人里で電気を作って電気を近隣で分配することで電気をまかなえるようになっていくだろう。

まだ電気が通っていないような発展途上国の町もこれまでより桁違いに小さい投資額で電力網をミニマムに構築できるようになっていく。 そうなったとき、各家庭とか個人事業レベルの発電所と電力利用者の間で料金をやりとりできる仕組みが必要になる。 ここで前述のようなブロックチェーンを活用した電力料金取引システムなんかは強いだろう。

ブロックチェーンは

ブロックチェーンやその上でやりとりされるデータはあくまでバックグラウンド。人が体験する現象としては電気を使い、その対価を法定通貨で支払うということになる。 あくまで発電装置や電気で動く装置の間のコミュニケーションプロトコルであるべきだろう。

ブロックチェーンやその上で取引される何かを人が明確に意識するようなことにはならないと思う。 たとえば、ブロックチェーンというか仮想通貨が法定通貨のオルタナティブになるような世界観には否定的。