恐怖する身体 ステラークの試みからの着想

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松岡正剛とドミニク・チェンの対話本、「謎床」を読んでいたら、ステラークのことがでてきた。

謎床: 思考が発酵する編集術

謎床: 思考が発酵する編集術

余談にはなるが、松岡正剛の凄さが僕にはわからない。「松岡正剛の千夜千冊」のなかでドゥルーズ=ガタリの欲望機械についてトンチンカンなことを言っているのを見たのがファーストコンタクトだったというのもあるかもしれない。これは「アンチ・オイディプス」を読まずに「欲望機械」という字面だけを見て書いたように思ってしまった。

1000ya.isis.ne.jp

他にも松岡正剛の著書を何冊かは読んだことがあるはずなのだが、衒学的というか「それは(人の名前)もそう言っているね」とかあまり本筋に関係ないのに知識を紹介したり、なんでもかんでも「編集」に強引に結びつけて我田引水している感が否めない。 というわけでいまのところすごさはわからないし、むしろ怪しんでいる。 でも松岡正剛がすごいという人は多いので、きっと自分にはまだわかってないだけなのかもしれない。 と思って「謎床」も読んでみたわけである。


大昔の記事で松岡正剛の「欲望機械」の話がでていた。

www.k5trismegistus.me


さてステラークの話。さも知っているかのように書いたが、僕も昔Gizmodoあたりで「腕に耳をつけた変人がいる」記事を読んだ程度で別にウォッチしていたわけでもないし、むしろまったく覚えていなかったくらいなのだが、改めて調べてみると面白い。

www.afpbb.com

単に腕に耳型の物体をくっつけただけではなく、ちゃんと音を感覚する能力を持っているそうだ。とはいえ本人の聴覚にはたらきかけるわけではなく、この耳に埋め込まれたマイクが拾う音はインターネットでストリーミングされており、世界中誰もが「聞く」ことができる。


今自分はエネルギー業界で働いているのだが、今そこそこホットな話題にデマンドレスポンスというものがある。経済産業省の定義によると「卸市場価格の高騰時または系統信頼性の低下時において、電気料金価格の設定またはインセンティブの支払に応じて、需要家側が電力の使用を抑制するよう電力の消費パターンを変化させること」らしいのだが、要約すると電気が足りなくなりそうなときに節電をお願いして、あまりそうなときには余計に使ってもらうことをお願いすることだ。

この「お願いする」は強制力をもたない、ほんとのお願い「今節電してくれたらお金その分はらうから!」というものと、強制力のある「そういう契約になってるからエアコン勝手にきるねー」というものがある。

前者のほうは、一般家庭レベルだと一ヶ月でせいぜい数百円浮くレベル。僕はそんなはした金(という言葉はよくないかもしれないが)のために、快適さを捨てる人ってそういないんじゃないかと思う。ちなみに僕は暑いのも苦手だが冷房も苦手なので家では29度設定とかでつけている。たまに冷房なのに温風が出ていることもある。

そこでふと思ったんだけれども、脳にはたらきかけて発電が逼迫してきたら暑さ寒さを感じにくくするデバイスとか、そういうのって無理だろうか。「感じにくく」するのは難しいかもしれないが。

自動車に乗っているとき、制限速度に近づくと急激に恐怖を感じるくらいならできそうな気がする。 頭に貼り付けて脳に電流を流すことで、集中力をブーストしたりリラックスできるようにするデバイスは数年前に発売されたようだ。

okstyle-tokyo.jp

ただ、そんなにエビデンスのある話ではないのでこのデバイスが効くとはいわない。

社会的に制限したいことを、ルールを定めて外部からしてはだめですといっても限界がある。たとえば僕が買った車がFIAT 500じゃなくてABARTH 695ビポストとかだったら、やっぱり機械のスペックを体感してみたい、高速でちょっと飛ばしてみようとか思うだろう。どうせみんな制限速度なんて守ってないし。

そこで感情の側から働きかけることで、そもそも内部からしたいと思わなくさせてしまうのは、有用性という面ではとてもアリだと思う。 でも、誰がその内面化すべきルールを決めるのか。どんなルールであっても、「抵抗することへの恐怖」を内面化してしまえば誰も抵抗できなくなる。

科学の進歩により、人間の人格の不可侵神話が崩れ、感情なんてものがいかにかんたんにテクノロジーで操作できるかがわかってきた。 それがどう実装されていくのか、正しく恐れる必要があるだろう。