ABCクッキングの体験に行ってきた

ABCクッキングの体験に行ってきた。

不思議だったのが、流し台が各調理台に併設されていない点。離れたところに集中的に設置されている。 このつくりのため、調理プロセスで流しを使うことが基本的にない。 体験レッスンだからなのかもしれないが、食材が結構下準備終わった段階で用意されていて楽しいところだけやる、という感じ。

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↑調理台の様子がわかるだろうか。

ABCクッキングはもともと調理器具の販売店で、その販路を拡大するために教室を始めたんだそうだ。 そして特長なのが、ABCクッキングが独自のライセンス制度を設けていて、そのライセンスを取るとABCクッキングの名前を使って料理教室を開いたり(フランチャイズ?)ABCクッキングの教室で教える先生をすることができるようになる。もちろん、そのライセンスを取得するためのコースも開講されている。 栄養士の資格を持っていたりすれば、このライセンスがなくてもABCクッキングの先生にはなれる様子。 ABCクッキングのパンフレットには、ABCクッキングの先生の8割以上はABCクッキングの卒業生であるということが書かれていた。

今の仕事先の社長が、「ABCクッキングは卒業生がそのまま先生になるので、新しく教室を作るときに外から人材を求人する必要もない。ABCクッキングに通っていたからABCクッキングの先生という仕事の内容をかなりの部分把握しているし、教育のコストも小さい。教室を開いて顧客を増やせば先生も増えて新たに教室を開けるようになるサイクルが回っている」ということを言っていたが、事実すごいシステムだった。

もともとABCクッキングは調理器具の販売が本業だったというのはまだ続いていて、生徒向けに独自ブランドの製品を売っていたり、家電メーカーの製品を紹介していたり。 調理器具はそれを所有したことでどういう効用があるのか店頭では分かりづらいが、実際試させて売ることができるのでコンバージョンレートも高そうである。

ABCクッキングには担任制というのがあるそうだ。 担任と言っても毎回その人が教えてくれるわけではなく、単なる連絡口であるようだ。 おそらく、新規獲得や商材の販売ができるとインセンティブが入るんだと思う。

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

最近、サブスクリプションビジネスに関する勉強をしていたんだけれども、ABCクッキングのビジネスモデルはかなり通じるものがあるように思う。 サブスクリプション≒割賦販売みたいな認識の人も多いと思うんだけれども、そういうことではない。

旧来のビジネスモデルは基本的に売るところにフォーカスしていた。もちろん顧客満足度が低ければ次はそのメーカーの製品は買わないぞと思わせてしまうので顧客満足度が重要なのはそうなのだが、別に満足させなくても一気に売り抜けて大儲けすることもできるわけだ。 (ちょっと話はそれるけど、観光地によくいる毎日閉店セールをやっているお店。あれは修学旅行とかでその観光地にやって来る人を相手にしているので長期的な関係性を無視して商売ができる)

サブスクリプションはお金をもらい続ける代わりに、継続的に顧客に価値を提供するという点がポイントなのである。 まずためしてもらって、よかったら継続的にお金を払い続けてもらう。継続してくれない限りは基本的に売る側が損をするような設計なので、本質的に顧客が満足してくれないと成り立たないビジネスモデルになっている。(カスタマーサクセスというやつ) そして満足してくれたら、「実はお値段は上がるけどもっと良いプランがあって、そっちにするともっと満足してくれると思うんですが、、」(アップセル)「実はもう一つ商品があって、組み合わせて使うのがおすすめなんですが、、」(クロスセル)とさらに満足させるかわりにお金をもっと払えという提案をする。 期待だけさせて売り抜けて、満足させないというビジネスモデルが経済合理的でない。

一方で、最初試すぶんには無料だったり手頃な価格なので、気軽にはじめて見ることができる。だめだったら一ヶ月で解約すればよい。 AIDMAみたいな古典的購買モデルはなりたたない。ものを買うときは、欲しいと思ってから「本当に買うかどうか」で迷うわけだけど、サブスクリプションの場合は欲しいと思ったらすぐ始めてみて、最初の単位期間の終わりに「やめるかどうか」で迷うことになる。 というわけで、新規顧客の開拓よりも解約率の低減のほうが重要な話になる。

ABCクッキングは別にサブスクリプションモデルをとっているわけではないのでピッタリあてはまるわけではないが、生徒に料理って面白いなと思わせて、パン作りとかほかのコースを取らせたりできることの幅をひろげる器具を売りつけたり、カスタマーサクセスを基礎においている点は共通だ。

顧客自体がそのまま自社のサービスを拡大することを担うようにかわる、というのはむしろいま一般的に知られているサブスクリプションビジネスのモデルには含まれていないけど応用可能性があるのではないかと思う。 DMM英会話とかもしかしたらそのうちDMM英会話の先生になれるコースをやりはじめたりするかも。(やたらセルビアの先生が多いが、もしかしたらすでにセルビアとかでやってるのだろうか。)

別に料理に興味がなくても、行ってみると面白いかもしれません。