久しぶりに、これは面白いなぁと膝を打つくらいのネット記事を見つけたのでご紹介。
ガスパン遊びとは
ガスパン遊び、どれくらいの人が知っているだろうか。。。 僕が小学生だった2000年前半頃には夕方の2時間ニュースの途中に差し込まれる特集でたまに報道されていたので、おそらく全盛期はそのころに中高生だった年代、いまだと30~40歳くらいの世代が経験していたものになるだろうか。
ガスパン遊びとは、カセットコンロ用のガスを吸い込む、薬物系の非行の一種である。(ライターのガスも使うことがあるそうだ) シンナーの乱用「アンパン」という言葉の「アン」をガスにもじってガスパンという言葉がうまれたというそうだ。
しかしシンナー等と違って、吸い込むガスになんらかの薬効があるわけではなく単に酸素の少ない空気を吸っているだけ。 酸欠状態になることで酩酊状態を味わえるんだそうだ。「ランナーズハイ」なんかも同じような原理ではないだろうかと思う。
バキの最強死刑囚編に出てくる柳龍光が説明してくれるが、人間は1分間息を止められるのに、酸素の含有量がすくない空気を吸い込むとほんのひと呼吸で影響をくらってしまうというバグみたいな挙動がある。
なので、別にカセットコンロのガスじゃなくてヘリウムガスだろうがなんでもよいということになる。 そして、ガス自体に麻薬のような効果があるわけではないので吸引行為そのものはまったく違法ではなく、取締が難しいとのことである。 できるとしても補導という名の注意くらいだ。
ポイントとしては、ガスパン遊びというのは他の薬物を手に入れるルートを持たない若年層のみに見られるということで、かなり対象年齢の狭い非行行為であるということである。
より細かいことはWikipediaででも。
何が面白いのか
最初に貼った記事の、以下の部分が注目できるポイント。
いつから、どのようなきっかけでガスパンを始めましたか?
りょうすけ:2コ上の先輩がガスを吸ってるのを見て「何すか、それ?」って、完全に好奇心からですね。はじめて吸ったのは、中2の14歳のときです。その先輩は地元では知らないやつがいないほど有名な不良なんですけど、強制的にやらされたとかではなく、「これだ!俺が求めているドラッグは」って、一発でピタッとハマりました。
悪い先輩たちから代々、伝わってきたのですか?
りょうすけ:いや、今30歳くらいの人たちがやり始めたみたいで。それが俺らの2コ上の先輩に伝わって、バーっと広まったみたいです。その不良の先輩が、悪いつながりが多かったから伝わったんでしょうね。
このりょうすけという人物の年齢がこの記事の発行次点で23歳である。この時点で30歳くらいの世代から25歳の世代に伝わったということになる。 前述したガスパン遊びの対象年齢?から、5年くらいギャップがあることとなる。(この30歳世代の「悪い先輩」は30歳になってもやっていたのだろうか?)
インタビュアーも言う通り、何らかの理由があって5年間すたれていた文化が、突然息を吹き返したというのが不思議である。
ガスパンは 20 年以上前からあるものですが、特定の地域で特定の世代に伝わって、そこで集中して伝染するというのは不思議です。
なぜなのか
こういった可能性があるんじゃないかな?という想像程度ではあるが、、。
ガスパン遊び自体、表現はアレだが「ダサい」ドラッグである。効果はたかが知れているし、その効果に比べてリスクは過大だ。
「りょうすけ」氏も使っている大麻のほうがおそらく薬効は強いし、安全である。(ガスパン遊びは窒息や爆発でその場で死亡するリスクがあるが、大麻でその場で死亡することはまずないでしょう) 日経新聞にもあるように、大麻自体の入手性も上がっている。 それなのにいまだにガスパン遊びをやっているコミュニティというのは、大麻のような薬物にリーチできない、外部から閉じたコミュニティであることが想像される。
http://www.edu.utsunomiya-u.ac.jp/sociology/2010saito.pdf
大学の卒論なので内容面の保証は薄いが、近年の非行少年グループの特徴は仲間意識や団結力は弱いが、強い同調圧力で結びついているという点が指摘されている。 目的意識が弱く、外部から新しくて強いナニカを輸入することに積極的ではない、なのでガスパン遊びのようなものが偶然もたらされてもそこから先に進むことなく、 進歩(というと語弊がある、、)を拒むグループが存在するということなのではないだろうか。
非行少年社会のネットワーク構造の変化と、ガスパン遊びというニッチな特性が噛み合うことで流行の局地性をもっているのではないだろうかと考えた。