最近ニュースで聞く未承認国家 未承認国家の暮らしは日本の暮らしとどう違う?

今月の学び「未承認国家の暮らし」2022年4月

ロシアによるウクライナ侵攻のニュースの中で、「未承認国家」という言葉が聞かれるようになった。 この侵攻が始まる前から、ウクライナのドンバス地方の一部はルガンスク人民共和国・ドネツク人民共和国を自称する主体が実効支配しており、ウクライナ政府の主権が及んでいなかった。

ウクライナの西側に接するモルドバの東端、つまりウクライナと接しているあたりはトランスニストリアまたは沿ドニエストル共和国という同じようなエリアが存在しており、ロシアは黒海沿いにここまで勢力圏を広げようとしているのでは?と言われる。

旧ソ連圏には、この沿ドニエストル共和国をはじめ、アブハジア共和国やアルツァフ共和国といった聞きなれない国が存在する。

主権・国民・領土を持ちながらも国際的な承認が得られていない国の暮らしとはどんなものなのか気になったので、調べてみた。

未承認国家の暮らしについても、3つのキーセンテンスでまとめてみる。

  • 未承認国家だから生まれる暮らしへの影響は、パスポートが使えるかくらいしかない
  • 外から訪れることはできる、が自己責任
  • 日々の暮らしは民間の団体がどう扱うか次第

未承認国家とは

どの国が未承認国家なのか、これはなかなか難しい問題である。たとえばサハラ・アラブ民主共和国は国連加盟国うち一定数が承認している。 まぁなんとなく、国連に加盟している国のうち、10カ国もその国を承認していない国(?)くらいが未承認国家といって誰も違和感がないラインじゃないだろうか。

ちなみに、世界に現存する未承認国家の位置関係はこんな感じ。

https://www.instagram.com/atlasova.world/?hl=en

未承認国家だから生まれる暮らしへの影響は、パスポートが使えるかくらいしかない

もちろん、国同士の正式な外交関係がない影響は多岐にわたるが、どうも調べていくと日々の暮らしレベルではこれくらいしか影響がなさそう、ということがわかった。 沿ドニエストル共和国発行のパスポートに対して、日本政府はそんな国はこの世界に存在していないという態度なので、存在していない国がこのひとは確かに誰々ですと保証されていたところで信用はされない。。 要するにICチップがちゃんと入っていようが、日本国内ではパスポートのような見た目をしたジョークグッズでしかない、と言っても過言ではないだろう。

というわけで、沿ドニエストル共和国発行のパスポート(があるのかどうかすら知らないが)では、沿ドニエストル共和国を国家承認しているほんの一部の国や、相互承認している未承認国家くらいにしか入ることができない。 実はロシアの傀儡未承認国家であっても、ロシア自体は国家承認していないことが多い。一方で、それらの国の人々にロシアのパスポートを発行しているそうだ。

外から訪れることはできる、が自己責任

逆に、これらの国々は日本のパスポートを使って入ることができるようだ。インターネット上の旅行記を見ると、モルドバから出国手続きはないのに(モルドバから見たらモルドバ領なので)沿ドニエストル共和国の入国手続きがある(パスポートにハンコは押されず、紙をもらう)という体験をすることになるようだ。 なので、自分たちが海外を訪れることは難しいものの、観光などで訪れる外国人と触れる可能性はある。その点で鎖国のようなものとは違う。

沿ドニエストル共和国の首都ティラスポリなんかは、すでに旧共産圏でも姿をけしているレーニン像が残っていることを売りにしていて、観光収入の獲得を得ようとしているとのこと。

ただし、日本政府として沿ドニエストル共和国と外交関係はないので、仮に沿ドニエストル共和国の中で日本人が事件に巻き込まれてもどうすることもできない。というわけで、日本政府の保護を期待できないということになる。 また、未承認国家にはえてして対立している国がある。アルツァフ共和国に入国しようとすると、パスポートにスタンプを押される。このスタンプが押されていると、アルツァフ共和国を特に強く認めていないアゼルバイジャンには入国できなくなるそうだ。

ただしこれすらも例外がある。日本を含め多くの国は「中華民国」(=台湾)を国としては認めていない。しかし、日本には実質的な大使館のような「経済文化代表処」があり、台湾政府発行のパスポートで日本に入国することもできるし、日本政府発行のパスポートを持って台湾に行けば、困ったときには日本政府の機関に助けを求めることもできる。

日々の暮らしは民間の団体がどう扱うか次第であることが多い

グローバル経済システムの中にいるのかどうか、というのは国と国の外交関係よりも、企業や民間機関がどう考えるかというところの影響が大きいようで、「未承認国家」であるかどうかが本質的な違いはあまり持たないということがわかってきた。

インターネットの国別トップレベルドメインに .tw があるが、これは民間団体のICANNが管理するものである。 なので、アメリカ政府がどう考えるかというより、ICANNがどう考えるかということに左右されている。

未承認国家の暮らしで疑問だった、クレジットカードが使えるかどうかというところも同じで、あまり承認の有無は関係なさそうである。。 たとえば、アメリカは承認していない台湾ではVISAが使える。一方でアメリカは国家として承認しているが経済制裁をおこなっているロシアやイランではVISAを使うことができない。 JETROの資料によれば、北キプロスでもクレジットカードはつかえるんだそうな。 これも、VISAがその地域で決済を取り扱うかどうかで決まっているんだろう。

視点

意外と「未承認」だから変わらないことが多くて拍子抜け

「台湾」って考えると、未承認国家だからという制限はあまりないともっと早く気付けたかも。

「未承認」であることより、誰が承認しているかのほうが問題だと気付いた

未承認国家といいつつ、世の中の誰もが承認していないわけではない。数が少なくても国として承認している国があったり、国同士の付き合いでは承認がなくても民間機関・企業が承認していたり。 それが誰なのかというのがむしろ重要で、アブハジアだとかそういうところは、ロシアが承認する理由やそこにいたるまでのプロセスを考えると西側の金融システムをささえるような企業は関わりたくないだろう。 なのでクレジットカードは使えない。

読書ガイド(参考文献)

未承認国家と覇権なき世界

未承認国家とよばれる現象を網羅的に解説している。著者の人は、最近ウクライナ問題でよくテレビにでている。

旅行記

今回は政治的なことより、人々が何ができる・できないみたいなところに興味が会ったので、書籍より実際行ってみた人の旅行記が参考になった。

4travel.jp

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